珈琲野郎のコーヒー党宣言 コーヒー豆を売るより、管理を売ろう!!


1973年6月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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【家庭のコーヒーは豆が勝負】

私の主宰する日珈販の加盟店では、当社の発売している高級珈琲豆「まごころ」をブレンドコーヒーで100gあたり220円で販売しています。
 通常デパートで販売のコーヒー豆は普通のブレンドで120円~160円位ですから、ずいぶん高いものを売っているわけです。
 しかしその高いコーヒー豆がその辺の安物よりもはるかに多く売れています。
 それも、値段さえ高ければ高級品だろうという単純な高級品嗜好に乗っかって売れているのではけっしてありません。なぜならば、値打ちのよくわからない美術品・宝石ならいざ知らず、コーヒーは食料品ですから必ず皆さんの口の中にはいってその味をためすことができるわけですから、高いだけの値打ちがあるかどうかは、判断できます。
 しかも、最近次々と開店しているかっこうばかりの珈琲専門店と違って、家庭で飲むコーヒー材料となりますと、そんな雰囲気でのごまかしはききません。 
 ですから、私達は胸を張って品物が良いから売れるのだと大いばりで売っていられるのです。

【100kgの豆を廃棄処分にする】

 さて、日珈販の加盟店で売っているコーヒーの品物はどう良いのでしょうか?
 まず単純に考えられることは、原料豆の品質の違いです。確かに品質は違います。だが、そんなに値が違うほどほかのものと品質が違うわけではありません。
 だとすると加工法でしょうか。それは大いにちがいます。小さなロースターによる手造りのコーヒー豆ですから風味も違うしいわゆるコーヒー豆の味がします。
 しかし、品質の良い豆を手造りで作っただけでは本当に美味しい豆をコーヒー党の皆さんにお届けすることはできないのです。
 最近日珈販のある加盟店で100kg以上の豆を廃棄処分にしました。理由は焙煎後の保存期間を越えたからです。
 このように販売店が、積極的に自分の店の豆を管理し、たえず美味しい豆を売ろうという姿勢がなければコーヒー党の皆様に美味しいコーヒーを飲んでいただけないのです。
 日珈販の加盟契約書第5条第8項には「加盟店は商品及び指定メニューの品質の維持に関して細心の注意を払わなければならない。また、鮮度を生命とする商品及び指定メニューに関しては、本部の指示する期限以内に販売しなければならない。在庫管理不行き届きのため限度を越えてストックされたものに関しては本部はその廃棄を命ずることができる。この場合、廃棄されたものの代価は加盟店の負担とする」と規定されており、自発的に管理を行わない店に関しては本部は強制的に管理を行う権限を有しています。
 幸いなことに、このような権限を本部が行使したことは一度もありません。

【安かろう、悪かろうのデパートのコーヒー豆】

 デパートやスーパーマーケットあたりでも、私が見て回りますと平気で変質したコーヒー豆を陳列しているのをよく見かけます。
 デパートさんあたりは、国民的感情を重視してとやらで、値段を安くすることばかり気を使って、腐りかけのコーヒー豆や、安物の粗悪品をタップリ混ぜ合わせたコーヒー豆を得々としてお売りになっているようですが、コーヒーは日常品化しつつある食品ですから、フランスの無名の画家の絵を雑貨として輸入して「フランス名画展」とやら銘打って売るようなわけにはいかないのです。だからもう少し良心的な売り方をしてもらいたいものです。
 もっとも、日本のデパートやスーパーにはマーチャンダイザーはいなくて仕入れ屋しかいないそうですから、どだい専門的な知識を求めるのが無理なのでしょうが、それならそれでデパートやスーパーに納品している焙煎業者は得意先におもねってばかりいないで、もっと正しいことを教えてやるべきではないでしょうか。そうしないといまに自分の手で墓穴を掘ってしまうことになるでしょう。
 またもう一つ見方を変えれば、食品専門店と自他共に認め、高級品を売ることを誇りにしている青山・国立・軽井沢のK屋さんあたりでも、100g140円程度のブレンドコーヒーを自社ブレンドとして売っているくらいですから、われわれ本物のコーヒー専門店以外にそのような高度の販売方法を求める方が無理かもしれません。
 だとすると、当分の間、われわれにとってはありがたいことですが、加盟店のない地区のコーヒー党の方には全くお気の毒なことですね。