いよいよ外資攻勢始まるか?  昭和50年のコーヒー業界


1975年1月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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 皆さん、明けましておめでとうございます。
 旧年中はぽえむ並びに日珈販をお引き立てくださいましてありがとうございました。
 今年も昨年に倍するごひいきの程をお願い申し上げます。

~波乱を招くコーヒー業界~
 さて、今年はコーヒー業界にとっては波乱の年になりそうです。
 焙煎業者に対する近代化促進法の適用が期限切れとなりますし、同時にインスタントコーヒー自由化に際して国内業者との融和のために、農林省に対して提出していた外資系のコーヒー会社のわが国におけるレギュラーコーヒーの製造販売を控えるという念書の期限が切れるわけで、わが国コーヒー業界にとっては、一昨年の国際コーヒー協定における経済条項の廃止につぐ重大事態と考えていいでしょう。
 わが国のコーヒー業界の中には、外資系のコーヒー会社がわが国の市場に進出することについては楽観論を述べるものも多いようですが、私は、外資系、特にゼネラルフード(GF)は必ず進出してくるものと確信しています。
 昨年、12月13日付日経産業新聞によりますと、ジャパンメリタ社が味の素ゼネラルフーヅ(AGF)とタイアップして、お歳暮にコーヒー豆とコーヒー器具のセットを販売したということですが、このことなどは非常に気になることです。
 私はその記事を読むまでは、メリタ社はメリタ社独自の販売ルートでコーヒー業界に参入してくるものと思っていましたが、AGFと組んで浸透するという手もあったということです。

~無視できない市場・日本~
 GFにしても、この数年来アメリカのコーヒーの消費が落ち込み、その量も10パーセントに達するということですからこの数年来アメリカとは対照的にコーヒーの消費量が伸びている日本の市場を無視するわけにはいかないと思います。
 アメリカのコーヒー消費量現象の原因が、パーコレーター等の普及によるといわれているだけに、GFがメリタ社と組むということは誠に妙案で、わが国の焙煎業者にとってこれほど恐ろしいことはないような気がします。
 GFという世界のトップにランクされるビッグビジネスが、日本の家庭でもっとも知名度と浸透度の高い味の素と組み、さらに最も機能的に秀れたコーヒーメーカー製造元とタイアップするということは、販売政策として敵ながらアッパレとしかいいようがないと思います。
 このままでいきますと、わが国のコーヒー業界を支えるマーケットになろうということが明白な家庭用コーヒーは、マックスウェルハウスコーヒーを代表とするGFの商品ラインに押さえられてしまうのではないかと予想されます。
 今後、GFの戦略がどのように展開されるかは予想できないとしても、手をこまねいてはインスタントコーヒーをアッという間に日本の家庭へ売り込み、そして、その大半のシェアを握った手並みと同じように、レギュラーコーヒーのホームマーケットも押さえられてしまう可能性は十分にあると考えて間違いはなさそうです。
 こうなりますと、焙煎業者等が長い年月をかけて育ててきたわが国のコーヒーマーケットは、レギュラーはGF、インスタントはネッスルといずれも外資系に押さえられてしまうことになります。

~品質の向上が唯一の対応策~
 では、一体このような外資系のひそやかな侵入に対するわが国のコーヒー業界はどのような対応策をたてているのでしょうか。
 私にいわせると、一部の業者以外にはまったく無策か、ピントはずれの対策しかたてていないということです。その最たるものが原料問題です。GFのようなビッグビジネスに比べればわが国のコーヒー業界のトップであるUCCにしても零細企業以下の存在でしかないことは明らかですが、それ以外の業者とすればコンマ以下もいいところでしょう
 となると、当然GF攻勢に対して資力や量販で対抗しても無駄なことは誰がみても判ります。そして、質で対抗する以外に手がないことも自明の理です。
 しかし、そのことをわが国の業者は真剣に考えているのでしょうか。
 私は国内業者が、業務用というコップの中でシェアを争い、安値を競っているような現状では、外資系は赤子の手をひねるような調子でわが国のコーヒーマーケットを押さえてしまうと思います。
 協業化を進めたり集中焙煎工場を建設したりすることは、経営の合理化から考えて確かに有益だと思いますが、品質の向上といういちばん大切なことにつながらなければ外資系にはたち打ちできません。
 なにしろ、相手は日本全体のコーヒー消費量の数倍を扱うコーヒー会社ですから、スケールメリットということでは、日本の業者全部が束になってかかってもかなわないと思います。
 品質の向上こそ決め手です。そのためには今までのように、安物のコーヒー豆ばかり使っていては駄目でしょう。
 わが国のコーヒー業界のために、私は今年もまた、原料豆の向上を目的に頑張りたいと思います。