珈琲野郎のコーヒー党宣言 商社はコーヒー豆を買い占めるな!!


1973年10月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
kyowakoku1973-10-150-240
なくなった□■□□特恵制度

 第2次国際コーヒー協定の期限が去る9月30日をもって満了し、10月1日より第3次国際コーヒー協定が発効されることになり、これによって我国のコーヒー業界は新しい局面を迎えることになりました。というのは、この協定からは従来の新市場制度が撤廃されることになったからです。
 新市場制度というのは本欄でも何度か述べてきましたが、一口に言えば特定の国に限って協定外の安い価格でコーヒーを取引してもよいという特恵制度です。
 我国もかつてはコーヒーの普及率の低い国というので協定発足当時から新市場国の指定を受けていましたが、今後は新市場という制度自体がなくなってしまったのです。その理由は、国際コーヒー協定が生まれた当初の世界のコーヒー事情は生産過剰気味で、コーヒー協定も生産国が消費国の買い叩きを阻止するために作ったものでした。
 ところが最近では産地側の生産調整とコーヒー需用の伸びから需給のバランスが逆転し、当初と反対に消費国が生産国からの輸出割当を得るための協定となってきています。
 新市場制度自体も元来は余剰コーヒー豆の処分が目的でしたので、余分のコーヒー豆がない現在では全く意味のないものとなってきていました。それで新市場制度が撤廃となったのですが、私はこの制度のもつ恩典であった余剰コーヒー豆を安値で買えるという特権の喪失にはあまり遺憾の意を抱きません。むしろ賛意を表したいほどなのです。
 なぜならば、我国のコーヒー業界は多年この特恵制度を悪用して安価で粗悪なコーヒー豆を輸入し、コーヒーの味の低下の原因となっていたからです。この制度がなくなり粗悪品との値幅が少なくなれば粗悪な安物を輸入する妙味がなくなり、結果としてコーヒー豆の向上・味の向上につながると考えられるからです。

大資本の□■□□買占め反対

 むしろ私は、新市場国であったがための制約、すなわち新市場国は新市場国以外の地域にコーヒー豆を輸出することを禁じていた制約のなくなったことの方が重大な意味を持つのではないかと思います。
 これをもう少し説明しますと、新市場国である我国の商社が一度買付けたコーヒー豆に関しては、新市場国以外のへの輸出は禁じられていました。すなわち、一度買付けたコーヒー豆は事実上輸出できず、我国内で消費しなければならなかったのです。したがって、商社がコーヒー豆を買占めても、結局は国内で消費しなければならず、それはダンピングを意味するので、決してうま味のあることではありませんでした。
 しかし、新市場制度がなくなるとどこへ売ってもいい訳ですから、日本の商社の海外でのコーヒー豆買い占めも考えられる訳です。
 現に昨年の墓商社側は米の買占めで悪名高い丸紅をはじめ三菱商事、三井物産等が首都圏のコーヒー焙煎業者を集めておどかしをかけた事実を知っています。表向きは“最近のコーヒー豆の取引状況の説明会”ということでしたが、「国内相場が低すぎる場合はオファーを出さない」とか「品物を第三国に売る」とかのご発言があったようで、これは客観的には“おどかし”以外の何物にも受け取れません。
 私は商社の買占めすなわち悪とは考えていません。商社の側でおっしゃる通り品物の供給を確保するための正当な機能であることは充分に認めます。
 しかし、現実に買占めによって値上がりするということになれば、これは買占めすなわち悪と考えざるを得ないでしょう。
 もしも商社の方達がおっしゃるように、買占めという行為そのものが品物の安定供給をめざすものであるならば、商社は買占めによってむしろ値上がり前の安い価格で品物を供給するのが当然といえます。それを安定確保と称して品物を買占め、品物が値上がりしたところでその相場の価格で売るのでは、格好のいいことを言ったって通りません。
 コーヒー業界でもし今後そのようなことが行われるとしたら、我々コーヒー党としては黙っている訳にはいかなくなります。
 この珈琲共和国も発行部数が5000部を越え、年内に開店するぽえむの分を計算すれば7000部も間近です。来春には10000部を越えるでしょう。そしてこの読者達の数十倍のコーヒー党がいる訳です。
 もし商社が我々を弱小とあなどって無体を働くならば、我々は総力を挙げて戦うことになるでしょう。
 ベトナム戦争において巨大な力を持つアメリカは、その力でベトナム人民の戦いを封じることができず、逆に敗北を喫しました。
 商社もその力を過信すれば、必ず我々コーヒー党の人民達の正義の戦いの前に屈することとなるであろうことを、肝に銘じておかれるがいいと思います。