有言実行こそコーヒー業界の進む道


1975年2月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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 昨今の新聞等をみますと連日のように「中小企業の倒産や、一流企業の一時帰休・採用延期・人員整理・管理職の賃金カット」など暗いニュースが報道されています。そんな環境の中で、我々日珈販は、着々と売上高・珈琲取扱い高を伸ばして来ました。

■この不況になぜ2倍半増か?
 一昨年12月はコーヒーの取扱量が2トンそこそこでしたが、昨年12月には5トンを軽くオーバーしましたから前年に比べて2倍半以上になったことになります。
 これに対して店舗の増加率は3割程度ですから、ざっと考えても一店当りのコーヒー消費量の増は殆ど売店部門でまかなったという計算になる訳です。
 このように売店部門の好調即ち家庭用コーヒーの伸びという傾向は、ぽえむが加盟店の要請に基いて実施しているコーヒーバザールの人気となって著しくあらわれています。経堂の住宅地の真中にある経堂北口店などは1日で40万円近くも売る好成績をあげましたし、その他の店での成績もこれに迫っています。
 また、年末のコーヒー豆の店頭販売も、所沢店の12月30日の96400円を筆頭に40000円以上売った店が続出しました。そしてそれが一昨年と違う点は、一昨年までは暮に1日程度そんな日があるということでしたが、今度の場合は年末数日間そのような売上げを記録していることです。
 また、年が変ってからも売店売上げが落ち込んでいませんから、ぽえむの顧客に限ってはコーヒーの家庭消費が定着したと考えていいと思います。
 喫茶店等のコーヒー消費量が落ち込んでいるといわれている時に、このような家庭用のコーヒーが売れるという現実を見せられると、我が国のコーヒーマーケットの方向はすでに決定されつつあるの感を深くします。

■いよいよ正攻法の時代が…
 さて、このように家庭へコーヒーが浸透してくると、当然今までのように業務筋が価格や品質のリーダーシップをとるということは次第に不可能となり、消費者大衆がその決定権を握ることになるのでしょう。
 また、この2、3年来急速に変わりつつある消費者の意識構造の展開からみて、大掛かりな宣伝などを行って消費者の購買意欲を意識的にかきたてるような人為的な消費の創造も困難になってきつつありますので、コーヒー業界に限らず正攻法のケレンのない商法以外、大衆は受け入れないものと考えられます。

■言葉とそして実行を
 これに対応するコーヒー業界はどうかというと、この年末年始に出版された新聞雑誌等に伝えられた業界人の発言においては、誠に言い分は真実を述べており、その抱負も仲々にご立派な内容でございますので、もしその通り実行されるのなら、我が国コーヒー業界は万々歳ということになります。
 私も、この「珈琲共和国」をはじめ、「柴田書店 喫茶店経営」、商業界「飲食店経営」などの雑誌や、「実録珈琲店経営」などの単行本で自分の意見を述べる機会が多いのですが、なんといっても現役の経営者として述べたことをいかにして実行するか、あるいは実行できることのみをいかに書くかに苦労します。
 経営者が評論家になってしまったらもうお終いです。
 経営者の言動というものは、新聞雑誌の読者よりもその企業の従業員や取引先や顧客の方が熱心に注目しているものです。だからもし経営者がいい格好でもするために、時流に乗るようなことを言ったところでそれが具体的に実行されないとなると、その経営者はたちまち、身内の者から信頼を失ってしまうのが落ちということになります。
 今年は周辺の様子からみて、コーヒー業界新生のスタートの年だと考えられますが、コーヒー業界の経営者にとってもその真価を問われる年だと思います。
 ひとつ今年は業界をあげて大いに論じ、大いに実行しようではありませんか。
 今年のコーヒー業界は、「有言実行」をモットーとしましょう。