コーヒー党宣言 美味しいコーヒーの提供こそぽえむの使命 今年も更に厳しく戦闘的に


1974年1月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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あけましておめでとうございます。
昨年は毎度お引立てを賜りまして、誠にありがとうございました。
今年も旧年に増すお引立てとご愛顧を賜わりますようお願い申上げます。

 さて、昭和49年は我々コーヒー党には厳しい年になりそうです。
 新年早々にはコーヒー豆の卸価格が大幅に引き上げられるのは必至です。
 円安ドル高のため、為替差損だけで2割は生豆の輸入価格が上りましたし、コーヒーを焙くガスや灯油も上ったし、ガソリン代値上げで配送費も上昇ムードだし、上らないのは我々の所得位なもので、この分で行けばコーヒー豆の卸価格が40パーセント位上ってもやむを得ない状況となってきました。
 そうなってくると、当然私共コーヒー党が飲むコーヒーの値段にも響いてくるわけで、喫茶店のコーヒーの値段も、一杯120円から150円の時代から、180円ないし200円の時代になろうとしています。
 我々コーヒー店の側から見ると、いくらコーヒー代を高くしても儲からなければ意味がなく、安くても儲けが多い方がいいのですから、今の世の中のようにコーヒー代は高いはそして経費倒れだはではお互いにつまりません。
 また田中角栄氏の日本列島改造論がいけないとかいいのだとか、インフレだとかインフレじゃないとか議論にしたって、議論している間にどんどん我々の暮しが苦しくなってコーヒー一杯満足に飲めない破目になってしまいます。角栄氏のようなお金持ならば少々の物価上昇も平気だろうし、インフレで土地が上れば資産もお増えでしょうが、我々庶民は増えるのは家計の赤字ばかりです。

【ケチケチ運動にご協力を】
 そこでグチばかり言っていても仕方がないので、日珈販では今春よりケチケチ運動を始めることになりました。その目的は今資源不足のため猛烈に値上がりしている包装資材を節約して少しでも商品価格の引上げを避けようというもので、容器を持ってコーヒー豆を買いに来て下さったお客様には代金を包装材料分だけ安くする等、たとえ包装紙の小片1枚につき1円、2円でも値引きしたいと考えています。
 今後、世界のコーヒー豆の需給状勢をみても、その他の資源をみても、なかなか物資不足の現実は、予想以上に厳しそうです。
 どうかコーヒー党の皆様も、美味しいコーヒーを少しでも安く楽しむために、ケチケチ運動に御協力下さい。
 さて、新年早々、しみったれた話ばかりで誠に恐縮ですが、正直なところ、コーヒー党にとっては暗い春になりそうです。日珈販としてもこの暗い世の中を少しでも明るくするため、皆様に美味しいコーヒーを提供することを至上命令として、そのために努力していきたいと思います。
 昨年ブームを呼んだコーヒー専門店も、今年も一層のブームを呼ぶでしょう。
 そして、コーヒー専門店とは名ばかりの見せかけのコーヒー専門店も多くなるでしょう。そしてそれ等の店は、代金ばかり高くとって、インフレで悩むコーヒー党の財布を一層圧迫するに違いありません。
 日珈販は、店でコーヒーを飲んでくださるお客様のためだけでなく、このような時節ですと店で高井お金を払ってコーヒーを飲むのがモッタイナイという方達のためにも、良質なコーヒー豆を提供して、家庭で安く美味しいコーヒーを楽しむことができるように努めたいと思います。

【本年度の課題】
 日珈販はそのために本年度の課題として、我々の経営理念に賛同する勢力を結集して、美味しいコーヒー供給のためにより攻撃的、より戦闘的な販売戦略を遂行していくつもりです。
 買占めをして、コーヒー豆の値段を吊上げるような商社や生豆問屋、くず豆を混入し見せかけの値段を安くみせようとする焙煎業者、インテリアや演出で客の目を惹き、まずいコーヒーを図々しく提供して高い金をとっている珈琲専門店と称する喫茶店、これ等はすべてわれわれコーヒー党の敵と考えて、容赦なき攻撃を加えていくつもりです。
 一方、本当にコーヒー豆の安定供給を目指す商社や生豆問屋や、よい品質のコーヒー豆を使って加工に手間をかけ品質の良いコーヒー豆を造り上げようと努力する焙煎業者や、コーヒー専門店の本道である美味しいコーヒーと本当の専門的知識を広く大衆に拡めようとする店とは、例え技術的には対決し、局地戦では激烈な戦いを行なおうとも戦略的には手を結んで、我々コーヒー業界にたずさわる者の使命である「美味しいコーヒーの供給」をなし遂げるつもりです。