珈琲野郎のコーヒー党宣言 焙煎業者はフランチャイズをなめるな!!
1973年11月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
フランチャイズシステムとは
第二次大戦後アメリカにおいて急成長を遂げ、一躍流通システムの寵児となったフランチャイズシステムが、我が国でも数年前から取り入れられ、最近では産業界がネコもシャクシもフランチャイズ導入といった感すらあります。コーヒー業界においても多くの企業がフランチャイズシステムに着手しており、一部にはすでにフランチャイズと称して加盟店を募集しているものもあります。
私共ぽえむチェーンも数年前からフランチャイズシステムの導入を図り、一昨年12月、(株)日本珈琲販売共同機構(日珈販)を設立して以来積極的にチェーン展開を行ない、発足時2店舗であったものが2年未満にして20店舗という急成長を遂げて参りました。
他から見ると、私共のようなチッポケな会社がフランチャイズシステムを導入し、ある程度の成果をあげているものですから、大企業にしてみれば自分たちでも簡単にできそうに思うのも無理からぬ話です。
ところで、そのネコもシャクシものフランチャイズとは、いったいどのようなものでしょうか。
我が国フランチャイズ業界で唯一の公式機関である社団法人日本フランチャイズチェーン協会では、フランチャイズシステムを「フランチャイザーがフランチャイジーとの間に契約を結び、自己の商号・商標その他の営業の象徴となるものおよび経営ノウハウを用いて、同一とみられるイメージのもとに商品の販売その他の事業を行なう権利を与え、一方フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下して、フランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行なう、両者の継続的関係をいう」と定義していますが、現実問題としては、フランチャイズの先進国アメリカでさえも、これがフランチャイズであるという定説はないようです。
フランチャイザーの実際
さて、フランチャイズの理論的な解明についてはその道の学者先生にお任せするとして、現実にフランチャイズシステムのオペレーションを行なっている私共はたいへん貴重な体験をいたしました。
加盟店の皆さん方は、数年、数十年もかけてコツコツと骨身を削って貯めたお金や、自分の退職金や大事な財産を売ったお金、親・兄弟・友人から借金したお金や銀行から借りた金利のつくお金など、まさに命の金といっていいようなお金を事業に投資します。そして我々は、その命がけのお金が必ず生き続けるよう請け負わされているのですから、並のことでは済まされません。そのためには、過去の実績に対する正しい分析とその評価に基づいて割り出された適切な営業のやり方を指導するわけですが、それとても現実に良い成績となって表われるまでは、その方法がほんとうに正しいかどうかわからないのですから、指導する我々はトコトン神経をすりへらしてしまいます。
それほどの思いをしてもそれでもなお充分であるとはいえない思いを続けているわけですが、地方ではあまりにも安易にフランチャイジーの募集を行なっているフランチャイザーがいるのには驚かされてしまいます。特にコーヒー業界における珈琲専門店のフランチャイザーに多いのですが、それらのザーたちは、たぶん仕事の恐ろしさというものを知らないのでしょう。
フランチャイズをなめるな!!
フランチャイズをやればコーヒー豆がたくさん売れるだろう、珈琲専門店が流行だから珈琲専門店のフランチャイズをやれば加盟店がふえて売り上げが伸びるだろう、珈琲専門店のフランチャイズをやらなければ時代おくれになってしまうなどという安易な考えでやられているのでしょう。
私にいわせれば、焙煎業者がフランチャイザーをやれる道理がありません。なぜなら、フランチャイズシステムというものは、お客様の中で、フランチャイズに加盟したものだけを特別に大切にするという差別政策が根本になっているからです。他と差別してくれないのなら、何も高い金を払ってまで加盟者になる必要がないのですから、差別は当然の義務です。他方、差別された方はどうかというと、あの店のコーヒーが評判がよいようだが自分の所へも同じものを持って来いと要求するでしょう。
こうなった場合、現在の焙煎業者はどうするでしょうか。やはり、圧倒的多数の非加盟店の方に傾かざるを得ないでしょう。
こんな簡単なことですら解決していないで、フランチャイザー顔をされてはたまりません。
我が国のフランチャイズもこれからです。このすばらしい流通システムを育てるためにも、私は、フランチャイズをなめるな!!といいたいのです。