「みんなの珈琲学」カテゴリーアーカイブ

1976年2月~1976年12月 (株)日本珈琲販売共同機構 創業者 故 山内豊之氏 コラム 全11号

みんなの珈琲学1


1976年2月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より

珈琲共和国1976年2月
珈琲共和国1976年2月

コーヒー代はまだまだ上がるか?
-不気味な海外相場の動き
前月号の年頭所感で、今年は一般の珈琲についていえば安いコーヒーが飲めそうだ、ということを書きました。
その筆の乾きもそこそこだというのに、ぽえむの店で飲ませるコーヒー代が値上がりしようというのですから、ぽえむファンの皆様もがっかりされたと思います。
そのがっかりしたところで、またも追いうちをかけるようですが、まあ2月は日数が少なく早く過ぎるようですので、悪いニュースをお届けしたいと思います。
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実は、世界のコーヒー市場がまたもや急上昇しつつあるのです。
前回のブラジル霜害の時は、事態が非常にドラマティックだったのでマスコミなども随分取り上げたのですが、今回の値上がりはそれをはるかに超える規模でありながら、たいしたニュースにはなっておりません。
それは、前回の霜害騒ぎが意外にあっさりと冷却したので、今回の相場上昇も多分にタカをくくっている様子が見えるからです。
しかし、霜害の時はどちらかというと、国際相場の上昇よりも国内の上げの方がひどかったのですが、今度の場合は、国内、国外で完全に逆ザヤになっているため、ちょっとばかり自体は深刻になりそうです。
業界では、今のところたいした動きは見せていませんが、生豆問屋筋の観測では、国内500社といわれる焙煎業者(加工卸業者)のうち、200社位がこの原料豆高騰で行き詰まるのではないかと行っています。
ひと頃の相場なら3ヶ月分くらいストックする位のコーヒー豆を買えたのですが、こう高くなると焙煎業者の資金力では1ヶ月半分位が限度とやらで、この高値相場が続くと、再びコーヒー豆の値上げという事態になりそうです。
そして、前回はコーヒーの端境期にあったため、年内分等を手当したむきもありましたが、今回はどこも急騰後だっただけに値下がりの期待が強く、また資金繰り上からもストックが少ないので、すぐコストに響きそうです。
どうやら今回の値上がりは生産国の政策によるものらしく、10月1日に発足する新国際コーヒー協定にからんで、生産国が来年度の輸出割当量を確保するために、9月末現在の在庫量を増やす政策に出ているためではないかと思います。
商社の情報によると、ブラジルは3年前の3.4倍、コロムビア2.5倍から3倍、増量剤に使われるアイボリーコーストのロブスター種などは5倍位という値上がりぶりで、ペルーなどオファー停止という強硬ぶりです。
毎度申し上げるように、喫茶店で飲ませるコーヒー代はサービス料金が大半ですから、コーヒー豆が上がったからといってすぐ値上げするというものではありませんが、私鉄運賃に続き郵便料金、そして秋には国鉄運賃と値上がりが続いていますので、このままでいくと、ぽえむもまた値上げしなければならなく
なるのではないか、といやな予感にかられるのです。
前回の値上がりの場合は、加盟店の利幅を少なくすることによって、店頭販売価格の値上がりを回避することが出来たのですが、今度上がれば店頭価格を値上げしなければならなくなります。
せっかくコーヒーが安くて美味しい飲み物であることが定着しはじめた今、再び値上げということは、我々業者としても大変につらいことになりそうです。
だが、コーヒーが完全な輸入食品である以上、我々はどうすることも出来ないのですから、その気持は無念の一語につきます。
ぽえむでは、今後原料豆の計画的発注など安定供給の体勢を確立していくつもりですが、その前途も決して楽観できないようです。

みんなの珈琲学2


1976年3月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より

珈琲共和国1976年3月
珈琲共和国1976年3月

《問》ぽえむの主張にムジュンはないか?《新メニュー》焙煎度の違う豆のミックス

前略
いつもぽえむのコーヒーを美味しく飲ませて頂いています。残念なことに、今月一日よりメニュー改定と同時に飲食の値段も上がってしまい、ついに二五〇円のアラカルトは姿を消してしまいました。商品券の額(千円)はずっと変わらないナァなどと、ふと思っています。
ところで本日ペンをとったのは、新登場のスペシァルミックスの事で少し伺いたいのです。
本日お送り頂いた”珈琲共和国”や新メニューには「焙煎度の違うコーヒー豆を数種類配合云々」と書かれています。でも、従来のぽえむでは「ブレンドコーヒーは焙煎度の同じものを使うべきだ。さもないと味にバラツキが出てしまう」という姿勢ではなかったでしょうか?だからこそ、売店でもストレートの「豆を配合して売ることを禁止」していた(共和国No.21 P7)のだと思います。この説明をして頂きたいと思います。「抽出法に多少の配慮がいる」ということだけではちょっとわかりかねるのです。現に、今まで何度かぽえむで飲んでみましたが、何となく毎度味が違うような気がします。
決してこれはスペシァルミックスを止めろと言っているのではなく、なぜこういうものが出てきたのかをお尋ねしているのです。もちろんぽえむのことですから”鮮度の差---を無視してブレンド公式だけに頼って(共和国No.37 P7)”いるのではないと思いますが・・・。

杉並区阿佐ヶ谷南2-5-32
かめだたつき

《答え》スペシァルブレンドはコーヒー党の醍醐味追求!

お便り本当にありがとうございました。
ご質問の主旨たいへんよくわかります。
こんなことを申し上げると失礼かもしれませんが、加盟店の従業員や日珈販のスタッフに対する演習問題として、きわめて適切な発問があったと喜んでいる次第です。

■視点の違う二つの問題
さて、この演習問題の模範解答ですが、第一の問題点は、「焙煎度の同じものを使うべきで、さもないと味にムラ、バラツキが出る」ということと、「ストレートコーヒーを配合して売ることを禁止している」ということを、混同して考えていらっしゃる点にあると思うのです。
この二つは、全く視点が違うのです。
前者は、焙煎度の同じコーヒー豆を使うことによって「誰が淹れても同じ味のコーヒーができる」ということを目的に、ジャーマンロースト、フレンチロースト、アメリカンローストなどのコーヒーが造られているという意味で、ストレートコーヒーを配合して売るな、ということとは無関係です。
後者の、ストレートコーヒーを配合して売るな、ということは、「ストレートコーヒーは配合して用いられるために焙煎されたものではなく、ストレートの個性が強調されるように焙煎されたもの」であるため、単に配合比率で計算しても計算通りの味が出ないから、ぽえむとして責任が持てないということで、配合して売ることを禁止しているのであって、両者は、別々のものについて述べているのです。
このことは、ご指摘いただいた「珈琲共和国」(No.21 P37)をもう一度よく読み返していただくと、おわかりいただけるだろうと思います。

■スペシァルミックスの味のフラツキ
さて、問題のスペシァルミックスですが、ご指摘どおり、味のフラツキは多少あると思います。
それは、焙煎度の違うコーヒー豆を配合すると、焙煎度の強いものと弱いものでコーヒー豆の成分の抽出具合に差がありますから、抽出に要した時間の差が、そのまま味のバラツキとなって出てくるのです。
ただ、店の従業員が、本部のマニュアルに従って忠実に抽出したならば、多少のフラツキがあっても、美味しいコーヒーのワク内に納まるはずのものなのです。

■スペシァルブレンド誕生の舞台裏
ぽえむを、私と家内の二人で営業していたころ、そして、ぽえむのコーヒーが美味しいと評判をとりはじめたころは、もっと複雑な配合のコーヒーを提供しておりました。
すると、私と家内との間で淹れるコーヒーの味にどうしても差異ができ、「マスターの淹れてくれるコーヒーじゃないと飲まない」というお客様がいたりして困ったものです。
私も不死身ではありませんから、年がら年中店でコーヒーを淹れるわけにもいかず、そこで工夫して、誰が淹れても責任の持てる味の出るコーヒーとして開発したのが、ジャーマンローストの代表されるぽえむのコーヒーだったんのです。
しかし、味覚というものはバラエティのあるものですから、もっと幅の広い美味しさも探求しようとすると、単一な焙煎豆を用いるのはどうしても限度があります。
そこで、もう一度コーヒーの美味しさを追求しようという目的で開発したのがスペシァルブレンドなのです。

■コーヒー党の真の醍醐味
それともう一つ、あまり誰でも簡単に淹れられるコーヒーばかりでは、コーヒーを大切にする心が失われます。
一つくらい意地の悪いコーヒーがあって、従業員の技能でコーヒーの味に差ができて、お客様から文句の一つぐらい言われるものがあってもかえって面白いのではないかと思うのです。
私も、ぽえむの各店にお邪魔したときは、必ずスペシァルブレンドでその店の技量を計りたいと思っていますが、貴方もひとつ、そのようなことをおやりになってみてはいかがでしょうか。
その結果でもお知らせ下されば、楽しいな、と思っています。