怪談ブルーマウンテン 本物・ニセ物?よりも味が一番
1972年8月15日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
猛暑の中、コーヒー党の皆様はいかがお過ごしでしょうか。残暑お伺い申し上げます。
さて、今月のコーヒー党宣言、暑苦しい話はやめにいたしまして、夏向きにお化けの話と趣向を凝らしました。題して怪談ブルーマウンテン。どのようなお化けが飛び出しますか、それは読んでのお楽しみ、です。
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ブルーマウンテンという珈琲、大英帝国王室御愛飲というのが元大日本帝国国民のお気に召したのか、わが国のコーヒー党はべら棒にこの珈琲をありがたがる傾向がある様です。ところがこのブルーマウンテンなる珈琲、やれ本物はどうだ、にせ物はこうだとコーヒー通を自認する輩のクチウルサイ事、巷間に珍説・怪説が飛び交っている訳ですが、まずその枯尾花の正体を明らかにしておきましょう。
ブルーマウンテンは、カリブ海に浮かぶ西インド諸島のジャマイカという小さな島国で産出されます。その島にブルーマウンテンと呼ばれる山があり、その山の海抜1000メートル以上の山で栽培される珈琲に限ってブルーマウンテンと呼ばれます。ジャマイカ全土から産出される珈琲の量は全世界の産出量の1パーセントに満たず、更に、ブルーマウンテンはジャマイカコーヒー全体の5パーセント程度ですからその希少価値は大変なものです。その上、ブルーマウンテンがNO1・NO2・NO3・バレー・トリアージに等級が分かれていますから、最上級品のブルーマウンテンNO1となれば、まさにその希少価値はダイヤモンド並です。
そこで当然そんな希少価値のものが本当にわが国へ輸入されているのかという疑問をもたれると思いますが、驚くなかれブルーマウンテンの大半は日本へ輸入されているという事です。
聞くところによると日本人みたいにブルーマウンテンをほしがる人種はないそうで、ジャマイカにとってはいいお得意さんだそうです。ところでこのブルーマウンテンという代物、コーヒー通が目の色を変えて求めるほど美味しいかというとそれはどうでしょう。
ある婦人団体で昨年調べたところによりますと、東京都内で売られているブルーマウンテンの量は、ジャマイカコーヒー1年分の産出量の全部に匹敵する量だったそうです。東京だけでこういう結果ですから、全国的にみれば言わずと知れた事、かなりのにせ物が出回っているという事です。まず考えられる事は、ジャマイカコーヒーの中のローランドコーヒーと言われる低地産の物をブルーマウンテンと言って売る手ですがそれでもまだ足りない訳です。そんなときにはメキシコの上物を転用するそうです。
いかにも知った顔をして珈琲に関するウンチクを傾けながら、珈琲はやはりブルーマウンテンに限るなんて言っているコーヒー通とやらも、何やら滑稽な感じがしますね。
しかし考え方によれば、珈琲は飲んで美味しければそれで良いはず、案外とだまされている方が理にかなっていると言えるかも知れません。
さて、このブルーマウンテンというお化け-涼しくなると今年も又ドロドロと出て来そうですね。