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1972年4月~1975年4月 (株)日本珈琲販売共同機構 創業者 故 山内豊之氏 コラム 全36号

コーヒー専門店のフランチャイズの本物は日珈販のぽえむチェーンだけである


1974年11月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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 最近、コーヒー業界でも、フランチャイズ方式によるコーヒー専門店の展開が盛んなようです。
 フランチャイズ方式ですと、資金面や人材確保の面での苦労がなくて、販売網を拡大することができますので、どの企業でも導入に積極的になるのでしょう。しかし、実際に始めてみると大変な苦労が伴います。

●FC本部は常に先を見る●
 日珈販も、日珈販というフランチャイズ専業の会社を設立して以来三年になりますが、フランチャイズ方式を押しすすめて行けば行くほど奥が深く、次から次へと問題が提起されてきます。
 たとえばマニュアル一つにしても、作成当時はよかったとしても、三年経過するとかなり用をなさないものとなってしまいますし、本部の指導能力にしても年々高度なものが要求されます。
 加盟店になられる方は、最初は素人(たとえ喫茶店をやっていた人でも、ぽえむについては素人)ですから、我々も指導するのに骨が折れません。
 しかし、少したって仕事の内容が判りはじめると、何しろ先方は、自分で他の商売をやって来たりした経験豊かな人達ばかりですので、うかうかしていると本部の指導員よりも実力をつけてしまいます。
 しかし、それでは本部の役目が務まりませんので、本部としてはそれらの加盟店の要求に答えるべく、先手先手と勉強していく必要があるわけです。

●FC方式の厳しい基準●
 それにもっとも重要なことは、加盟店が骨身を削って集めた資金を店に投資させる以上、必ず商売を成功させ、かつ、その成功を永続きさせなければいけないと思います。
 私が、コーヒー専門店のフランチャイズの加盟店募集広告なんかを見ていますと、十分に直営店でデータを得た上で募集しているのだろうかと思われるチェーンがあります。
 日珈販の加盟している社団法人・日本フランチャイズチェーン協会での加盟資格は、正会員でFC方式による営業をはじめて二年以上経過していること、十店舗以上のFCがあること、FC方式でうたってあることが実際に実現可能なことを証明するため、直営店で実際に行なっていること。加盟店の離脱率が二十パーセント以下であることなど厳しい基準が設けられています。
 その他、通産省令の定めによって、フランチャイズを行なう者は加盟を希望する者に対し、過去の実績や予想される営業成績、とり交わされる契約の内容などについて具体的に示すことが義務付けられています。
 私は常々疑問に思うのですが、これらフランチャイズチェーンの募集を行なっている者が、果たしてフランチャイズというものをよく理解しているのでしょうか。単に、FCをやればコーヒーがたくさん売れるだろうぐらいにしか考えないでやっているのではないかと思います。
 それに、一番不思議に思うことは、FC方式を唱えるコーヒー専門店のチェーンが、その展開の手法としていずれもサイホンによる抽出を行なっているということです。
 確かに、サイホンを使ったコーヒー専門店というものは時流にマッチしたものであり、現時点ではよい商売かもしれません。

●FCチェーンは運命共同体●
 しかし、年々、喫茶店におけるコーヒーの消費量が減っているということを考えれば、また、今後家庭用のコーヒーが業界の死命を制するであろう、ということが常識化しているコーヒー業界にあって、店でコーヒーを飲むということに主眼をおいたコーヒー専門店のFCをやるということは、合点のいかぬことなのです。
 先にも述べたように、加盟なさる方は少なからぬ資金を投下します。
 昨今の状勢では、この投下した資金が簡単に回収できるほど、コーヒー専門店は儲からないはずです。
 だとすると、数年たった今の型のコーヒー専門店がすたれたとしたら、その時いったいFCの本部は何をするのでしょう。
 おそらく、何の手の打ちようもないだろうと思います。
 そのことをよくご承知だから、大方のFCの本部は、加盟金やロイヤリティを徴収していないようです。つまり、最初から逃げ腰なのです。
 FCチェーンは、よく本部と加盟店の運命共同体だといいますが、こんな考えの本部のチェーンに加盟したら、それこそ運命共同体も何もあったものじゃありません。
 そんなわけで、当分の間は、コーヒー業界で唯一の社団法人・日本フランチャイズチェーン協会正会員である日珈販が、コーヒー業界で唯一の本物のフランチャイズであると胸を張らしていただきましょう。

日珈販創立3周年を迎えて コーヒー業界全体の発展のために尽したい


1974年12月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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 日珈販もこの12月1日で創立3周年を迎えました。
 珈琲共和国も同じく満3年、一度合併号がありましたので第36号となったわけです。この「コーヒー党宣言」も、途中、「珈琲野郎のコーヒー党宣言」とタイトルを変えたこともありましたが、通算して32回目になりました。

『主義主張を貫く珈琲共和国』
 日珈販も最初は3店舗でスタートしたのですが、来たる3日にオープンする駒岡店で29店舗にまで発展して参りました。そして、本部で取り扱うコーヒー豆の量も月間5トンを越え、全国350数社といわれるコーヒー卸売業者の中に入っても、100位までにはランクされる規模となって参りました。
 このように事業としては発展してきたのですが、この「コーヒー党宣言」の論旨からみると、わが国のコーヒー業界の現状は大きく進歩したとはいえないようです。
 正直なところ、書いている私もこのところ毎回のネタにつまって来ているというのが事実です。私の友人などからも「毎回よくも飽きずに同じテーマを書いているもんだ」などとひやかされますが、私も負けずに「主張が変わらない新聞は珈琲共和国と赤旗だけだ。それだけ理論体系がしっかりしているんだ」などとやりかえしていますが、実のところは少々ウンザリしているというのが本音でしょう。
 このことを客観的に見てみれば、コーヒー業界というものが、依然として3年前に問題提起したことを、今もって解決し得ないということになります。
 この3年間、わが国のコーヒー輸入量は40パーセント近く増えています。それだけ、商売のスケールも大きくなったということで、業界のかかえる問題も次から次へと起こって来ているはずです。それが未だに初歩的な問題を解決できないでいるということは困ったものです。
 私も口先では他社がモタモタしていてくれれば、それだけわが社は楽にチェーン展開をすることができるなどとウソブイテいますが、そんなこといっていては、業界全体が衰退してしまって、元も子もなくなるでしょう。
 本号山下規嘉さんの文にも出ておりますが、コーヒーとは本来日本茶の如き飲み物で、わが国のように特別視されること自体、おかしいことは自明の理です。
『儲け主義よりも品質の向上を』
 過日、フォード大統領来日の際、随伴した記者団のために開設されたホテル・オークラのプレスセンターでも、記者用のスナックでコーヒー代を有料にしようとする日本側と無料を主張する記者団とで話し合った結果、国際慣例としてコーヒー代は無料であるという結論に達したそうですが、ここらあたりが本筋でしょう。
 ところが、わが国のレギュラーコーヒー業界は旧態然として業務用中心で、これからは家庭用コーヒーの時代と口先で唱えても、いっこうに実行に移す気配はありません。こんな状態では、昭和50年の念書期限切れと同時にその活動を開始するのではないかと見られている、マックスウェルハウスコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ)あたりに、この数十年間、コツコツと努力して積み上げて来たコーヒーのマーケットをさらわれてしまうのではないでしょうか。
 そうならないためには、喫茶店経営者をはじめ、焙煎業者、生豆問屋、商社等が従来の儲け第一主義の商法をやめて、品質向上に努めない限り、資力も経験も数段上の外資系にやられてしまうのではないでしょうか。

『ぽえむの繁栄は大衆からの支持』
 私どもの「ぽえむ」のようなちっぽけな企業が、そんな大きなことを自力でやろうとしたってどうにもならないことは百も承知ですが、我々が家庭用レギュラーコーヒーの販売に品質第一主義で立ち向かい、わずか20数店で月間5トン以上も売る事実は事実として受け止めて、業界の皆様方のサンプルとして役立てば幸いだと思っています。
 巷には、コーヒー専門店が次々と増えています。そのお蔭で確かにコーヒー愛飲家の数も増え、コーヒーの消費も年々増えています。しかし、良質の原料豆の確保とか、品質の良い物を売るための努力とか、一般消費者へのコーヒーに対する誤解解消へのPRとか、根本的な問題と取り組まない限り、今のコーヒー専門店ブームも単なるあだ花に終わりそうです。
 私は3年間、こんなことばかり書いて来たために随分と業界からも憎まれ、いじわるもされましたが、結局は大衆から支持されて今日に至りました。
 また、この「ぽえむ」の繁栄ということが、コーヒー業界へのコーヒー愛飲家からの回答だとも思っています。
 この事実を業界の方たちが冷静に受け止めてくれることを期待するとともに、私も今後いっそう主義主張を曲げることなく、業界の発展に尽したいと思います。

いよいよ外資攻勢始まるか?  昭和50年のコーヒー業界


1975年1月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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 皆さん、明けましておめでとうございます。
 旧年中はぽえむ並びに日珈販をお引き立てくださいましてありがとうございました。
 今年も昨年に倍するごひいきの程をお願い申し上げます。

~波乱を招くコーヒー業界~
 さて、今年はコーヒー業界にとっては波乱の年になりそうです。
 焙煎業者に対する近代化促進法の適用が期限切れとなりますし、同時にインスタントコーヒー自由化に際して国内業者との融和のために、農林省に対して提出していた外資系のコーヒー会社のわが国におけるレギュラーコーヒーの製造販売を控えるという念書の期限が切れるわけで、わが国コーヒー業界にとっては、一昨年の国際コーヒー協定における経済条項の廃止につぐ重大事態と考えていいでしょう。
 わが国のコーヒー業界の中には、外資系のコーヒー会社がわが国の市場に進出することについては楽観論を述べるものも多いようですが、私は、外資系、特にゼネラルフード(GF)は必ず進出してくるものと確信しています。
 昨年、12月13日付日経産業新聞によりますと、ジャパンメリタ社が味の素ゼネラルフーヅ(AGF)とタイアップして、お歳暮にコーヒー豆とコーヒー器具のセットを販売したということですが、このことなどは非常に気になることです。
 私はその記事を読むまでは、メリタ社はメリタ社独自の販売ルートでコーヒー業界に参入してくるものと思っていましたが、AGFと組んで浸透するという手もあったということです。

~無視できない市場・日本~
 GFにしても、この数年来アメリカのコーヒーの消費が落ち込み、その量も10パーセントに達するということですからこの数年来アメリカとは対照的にコーヒーの消費量が伸びている日本の市場を無視するわけにはいかないと思います。
 アメリカのコーヒー消費量現象の原因が、パーコレーター等の普及によるといわれているだけに、GFがメリタ社と組むということは誠に妙案で、わが国の焙煎業者にとってこれほど恐ろしいことはないような気がします。
 GFという世界のトップにランクされるビッグビジネスが、日本の家庭でもっとも知名度と浸透度の高い味の素と組み、さらに最も機能的に秀れたコーヒーメーカー製造元とタイアップするということは、販売政策として敵ながらアッパレとしかいいようがないと思います。
 このままでいきますと、わが国のコーヒー業界を支えるマーケットになろうということが明白な家庭用コーヒーは、マックスウェルハウスコーヒーを代表とするGFの商品ラインに押さえられてしまうのではないかと予想されます。
 今後、GFの戦略がどのように展開されるかは予想できないとしても、手をこまねいてはインスタントコーヒーをアッという間に日本の家庭へ売り込み、そして、その大半のシェアを握った手並みと同じように、レギュラーコーヒーのホームマーケットも押さえられてしまう可能性は十分にあると考えて間違いはなさそうです。
 こうなりますと、焙煎業者等が長い年月をかけて育ててきたわが国のコーヒーマーケットは、レギュラーはGF、インスタントはネッスルといずれも外資系に押さえられてしまうことになります。

~品質の向上が唯一の対応策~
 では、一体このような外資系のひそやかな侵入に対するわが国のコーヒー業界はどのような対応策をたてているのでしょうか。
 私にいわせると、一部の業者以外にはまったく無策か、ピントはずれの対策しかたてていないということです。その最たるものが原料問題です。GFのようなビッグビジネスに比べればわが国のコーヒー業界のトップであるUCCにしても零細企業以下の存在でしかないことは明らかですが、それ以外の業者とすればコンマ以下もいいところでしょう
 となると、当然GF攻勢に対して資力や量販で対抗しても無駄なことは誰がみても判ります。そして、質で対抗する以外に手がないことも自明の理です。
 しかし、そのことをわが国の業者は真剣に考えているのでしょうか。
 私は国内業者が、業務用というコップの中でシェアを争い、安値を競っているような現状では、外資系は赤子の手をひねるような調子でわが国のコーヒーマーケットを押さえてしまうと思います。
 協業化を進めたり集中焙煎工場を建設したりすることは、経営の合理化から考えて確かに有益だと思いますが、品質の向上といういちばん大切なことにつながらなければ外資系にはたち打ちできません。
 なにしろ、相手は日本全体のコーヒー消費量の数倍を扱うコーヒー会社ですから、スケールメリットということでは、日本の業者全部が束になってかかってもかなわないと思います。
 品質の向上こそ決め手です。そのためには今までのように、安物のコーヒー豆ばかり使っていては駄目でしょう。
 わが国のコーヒー業界のために、私は今年もまた、原料豆の向上を目的に頑張りたいと思います。

有言実行こそコーヒー業界の進む道


1975年2月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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 昨今の新聞等をみますと連日のように「中小企業の倒産や、一流企業の一時帰休・採用延期・人員整理・管理職の賃金カット」など暗いニュースが報道されています。そんな環境の中で、我々日珈販は、着々と売上高・珈琲取扱い高を伸ばして来ました。

■この不況になぜ2倍半増か?
 一昨年12月はコーヒーの取扱量が2トンそこそこでしたが、昨年12月には5トンを軽くオーバーしましたから前年に比べて2倍半以上になったことになります。
 これに対して店舗の増加率は3割程度ですから、ざっと考えても一店当りのコーヒー消費量の増は殆ど売店部門でまかなったという計算になる訳です。
 このように売店部門の好調即ち家庭用コーヒーの伸びという傾向は、ぽえむが加盟店の要請に基いて実施しているコーヒーバザールの人気となって著しくあらわれています。経堂の住宅地の真中にある経堂北口店などは1日で40万円近くも売る好成績をあげましたし、その他の店での成績もこれに迫っています。
 また、年末のコーヒー豆の店頭販売も、所沢店の12月30日の96400円を筆頭に40000円以上売った店が続出しました。そしてそれが一昨年と違う点は、一昨年までは暮に1日程度そんな日があるということでしたが、今度の場合は年末数日間そのような売上げを記録していることです。
 また、年が変ってからも売店売上げが落ち込んでいませんから、ぽえむの顧客に限ってはコーヒーの家庭消費が定着したと考えていいと思います。
 喫茶店等のコーヒー消費量が落ち込んでいるといわれている時に、このような家庭用のコーヒーが売れるという現実を見せられると、我が国のコーヒーマーケットの方向はすでに決定されつつあるの感を深くします。

■いよいよ正攻法の時代が…
 さて、このように家庭へコーヒーが浸透してくると、当然今までのように業務筋が価格や品質のリーダーシップをとるということは次第に不可能となり、消費者大衆がその決定権を握ることになるのでしょう。
 また、この2、3年来急速に変わりつつある消費者の意識構造の展開からみて、大掛かりな宣伝などを行って消費者の購買意欲を意識的にかきたてるような人為的な消費の創造も困難になってきつつありますので、コーヒー業界に限らず正攻法のケレンのない商法以外、大衆は受け入れないものと考えられます。

■言葉とそして実行を
 これに対応するコーヒー業界はどうかというと、この年末年始に出版された新聞雑誌等に伝えられた業界人の発言においては、誠に言い分は真実を述べており、その抱負も仲々にご立派な内容でございますので、もしその通り実行されるのなら、我が国コーヒー業界は万々歳ということになります。
 私も、この「珈琲共和国」をはじめ、「柴田書店 喫茶店経営」、商業界「飲食店経営」などの雑誌や、「実録珈琲店経営」などの単行本で自分の意見を述べる機会が多いのですが、なんといっても現役の経営者として述べたことをいかにして実行するか、あるいは実行できることのみをいかに書くかに苦労します。
 経営者が評論家になってしまったらもうお終いです。
 経営者の言動というものは、新聞雑誌の読者よりもその企業の従業員や取引先や顧客の方が熱心に注目しているものです。だからもし経営者がいい格好でもするために、時流に乗るようなことを言ったところでそれが具体的に実行されないとなると、その経営者はたちまち、身内の者から信頼を失ってしまうのが落ちということになります。
 今年は周辺の様子からみて、コーヒー業界新生のスタートの年だと考えられますが、コーヒー業界の経営者にとってもその真価を問われる年だと思います。
 ひとつ今年は業界をあげて大いに論じ、大いに実行しようではありませんか。
 今年のコーヒー業界は、「有言実行」をモットーとしましょう。

商社・生豆問屋は目先の損得のみを追求するな


1975年3月1日コーヒー党の機関誌「珈琲共和国」より
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  聞くところによると、珈琲を扱っている商社や生豆問屋のセールスマンの間では、日珈販お社長たる私は「コーヒーに関してド素人で、箸にも棒にもかからん代物」だという評判だそうです。

-良質原料豆の確保こそ-
 なぜ、そのような評判が立ったかというと、どうやら昨年日珈販で発売しているコーヒー豆の加工先を変えた際に、加工先に対して原料豆の品質を均一化することを強く要望し、その意を受けて、加工先では出入業者にその旨を要求したことが事の始まりのようです。
 加工先を変更した当初はわれわれが要求した品質の原料豆が比較的在庫が豊富で、われわれの要求を満たすことが出来たのですが、最近ではコーヒーの在庫高こそ豊富であれ、われわれが要求するような品質の原料豆はなかなか入手が困難な状態に追い込まれ、必然的に生豆問屋や商社は供給に苦慮することになりました。
 しかし、われわれ日珈販としては、顧客の要望に応えるために、いい加減な妥協は許しません。
 このように原料事情が悪い時にこそ、良質の原料を確保し、美味しいコーヒーをコーヒー党の皆様にお届けするのが日珈販の使命だと考えていますから、いくら国内の在庫や輸入事情が良質原料豆の供給を困難にしているかたといって、それを認めては、日珈販がぽえむというコーヒー専門店のチェーン店を主宰する意味がありません。
 言い替えれば、われわれコーヒー業者の御都合で、コーヒー愛飲家の方に粗悪なコーヒーを押しつけるようなことは出来ない、ということなのです。

-コーヒー党を無視するな-
 一方、商社や生豆問屋の立場にすれば、長い間滞貨となっている原料豆の山の中から、われわれが要求するコーヒー豆を選ぶなどということになると、たいへんな手間がかかるわけで、まず不可能だといいたいのでしょう。
 それなら、昨年とれた新豆の良質なものを輸入して供給してくれればよいのですが、商社などは大量の在庫をかかえてお手上げといった状態で、在庫を何とか処分しようということで手がいっぱいというのが現状のようです。
 このような情勢にコーヒー業界がおかれていますから、私共の要求というものはない物ねだりに聞こえ、それがあたかも何も知らないで言っているように受け取られるのでしょう。
 誤解のないように言っておきたいのですが、われわれは何も知らないどころか、商社や生豆問屋のセールスマンたちよりもはるかに多くの情報をつかんでいます。
 たとえば、ある共同焙煎工場では最近缶入りのコーヒーを発売しましたが、これに使用するコーヒー豆を工場の構成母体である生豆問屋が産地から直輸入し、原料豆の特徴を生かしたコーヒー作りを行っていますが、これなど、やる気になれば出来るということの見本だと思います。
 私共も直輸入したコーヒー豆を一部使わせていただくことに内定し、ジャーマンローストの原料として使用させていただくことになりました。
 また、現在産地ではコーヒー豆がダブつき気味で値段も下がり気味なのに、わが国では在庫が硬直化して品質も滞貨のまま劣化していっているということも、十分承知しているのです。
 しかし、前にも述べたとおり、それを仕方がないと認めていては、せっかくレギュラーコーヒーに向きつつあるコーヒー愛飲家の気持が、原料豆の悪さが原因となって、手間をかけてレギュラーコーヒーを淹れてみたがインスタントコーヒーと大して違わないということで、再びレギュラーコーヒーに背を向けてしまったとしたら、いったいコーヒー業界の先行きはどうなるのでしょう。
 すでにコーヒー業界において焙煎業者たちは、飲食店におけるコーヒー消費量の低下という現実に直面して、その意識を変えつつあります。
 その前に立ちふさがってコーヒー業界を破滅に導こうとしているのが、今の商社や生豆問屋ではないでしょうか。

-問屋の名にふさわしい機能を-
 特に生豆問屋なんか、ただの商社の輸入したものを右から左へ動かしてサヤを取っているだけなら、その存在意義がありません。ユーザーも少しロットが大きくなれば商社と直取引をした方が、ペーパーマージン分だけ安く買えます。
 わが国古来の商業の知恵として発達してきた問屋制度は、その得意先の必要とする品物を取り揃えるという機能をもってこそ、問屋の存在価値が認められるのではないでしょうか。
 私は、今、国内で滞貨となっているコーヒー豆なんか、インスタントコーヒーの原料にでも安く叩き売って、良質なコーヒー豆を輸入し、コーヒー愛飲家に美味しいコーヒーを供給した方が、将来、現在の損失をはるかに大きく上回る利益に結びつくと考えるのですが、いかがでしょう。